第3話 岩の滝登り!?


 滝を登ると言えば鯉がまず頭に浮かび、現実的には鮭の遡上でしょうか。流れ落ちる水の音がお腹に響くように聞こえ、水しぶきの中高く飛び出す魚の姿が思い起こされます。ですが、岩の滝登りとはいったい何なのでしょう。

 何を訳の解らないことを、とお思いでしょうが、実は「滝登りの岩」とか「岩登りの滝」と呼ばれる場所はあちこちにあります。国内だけではなく、海外でも同様の意味合いの名前が付いた滝に出くわすことがあります。このような滝の共通点は、あまり大きな滝ではないことが多く、滝の比較的近く、それも滝の中くらいの高さの所に展望台があることです。そして、その滝の流れの中か、すぐ脇に岩があります。

 流れ落ちる水をじっと見つめて、しばらくして岩に目を移すと岩がすーっと上へ昇るように見えるのです。信じられないと思われる方も多いでしょうが、一度そういう滝で試してみて下さい。必ずや納得されると思います。

 これはどういう事でしょう。

 流れ落ちる水をジーと見つめていると、目は落ちていく水を追って上から下へ動きます。ある程度まで下を向くと、また、上へ戻って次の水を追って下へ向かって動きます。このように同じ速度で同じ方向へ動き続ける物を見ていると、目の玉は動くものを追う動き(滝では下向き)と素早く元へ戻る逆向きの動き(滝では上向き)の繰り返していきます。

 これは、ちょうど子供がぐるぐる自分で回転した後、目が回っちゃった、と言っている時の目の動きと同じです。目が回った時は、耳の中にある回転を感じる器官からの刺激で、横方向に同じような目の動きが起こります。これを眼振と言いますが、このために身体が止まって周りの景色も止まっているはずなのに、天井や壁がぐるぐる回り続けているように見えるのです。
 滝を見ている時も同じで、目が水を追う動きを続けているため、止まっているはずの岩が水とは逆の方向(上の方)へ動いているように錯覚するのです。

 洋の東西を問わず、古くから同じようなことに気付き、同じような発想をしているのだなと、改めて思いました。言葉や習慣がどんなに違っても、人間としての基本的な部分は全く変わりがないようです。やっぱり、みんな仲良くしなければいけないのですね。

 眼振も含めて、目の動きは極めて複雑なコントロールを受けて行われています。どんなに精密で、それでいて融通も利く、眼球運動制御の話もいつかしましょう。