第1話 犯人は誰だ


 花粉症は今や誰がなってもおかしくないポピュラーな病気になっていますが、20年前はまだ「花粉症」という名前すらあまり知られておらず、患者さんも滅多に来られませんでした。しかし、現在ではスギ花粉症と言えば知らない人はいないでしょう。毎年、季節になると目がかゆくなった人がたくさん受診されるようになりました。

 さて、花粉症による目の症状は、大きく考えると「アレルギー性結膜炎」に含まれます。アレルギー性結膜炎の原因になるものは、花粉だけでも、スギ、ヒノキ、カモガヤ、ブタクサなどたくさんあります。その他、ハウスダスト、カビ、動物の毛、羽毛、化学物質など、その人に合わないものであれば、何でも原因になり得ます。

 原因が比較的、頻度の高いものであれば、簡単に解りますが、ほとんどの人が大丈夫のものであれば、見つけるのは極めて難しくなります。今回は、アレルギー性結膜炎の原因が、なかなか分からなかった人のお話です。
 今から20年以上も前のことですが、時々ひどくかゆくなるアレルギー性結膜炎の男子高校生の患者さんを診ていました。あまり季節にも関係しないようで、いろいろ調べても、よくあるような原因では反応が出ず、原因も解らずじまいでした。

 目薬で症状を抑えつつ様子を見ているうちに、北海道の大学に見事合格して私の病院には顔を見せなくなっていました。ある時、街でばったりお母さんと会って聞いてみると、北海道へ行ってから全く症状が良くなって喜んでるとのことでした。やっぱり北海道は空気が良いからだろう、とひとり納得していたのですが、ある日、ひょっこり本人が診察にやってきて、また症状が出たと言います。よくよく聞いてみると、自宅で使っていた布団を送って使い始めてから、とのこと。あれま、布団が原因だったのかと、お母さんと驚くやら呆れるやら。
北海道は空気が軽い
 
 スギ花粉症などでは比較的原因は判明しやすいですが、今回の人のような場合は犯人捜しが非常に困難です。どんな時になるか、どんな所でなるか、何をした時になるか、本当に何を聞いてるんだろうと思われるようなことをいろいろ聞いて情報を掻き集め、推測していくほかはありません。アレルギーの病気の難しさを痛感した患者さんでした。

 なぜ、ここ20年くらいで急にスギ花粉症が増えたのかは、また別の機会にお話ししましょう。
犯人は誰だ!